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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
三
三島は左手でおちづを抱えこみ、右手で口を押えた。三島の左手はおちづの背中から胸へまわっていた。その腕は彼女の胸のふくらみを押しつけ、さらに強く緊めつけた。
――そこへ触らないで。
おちづは頭の中で絶叫した。
――そこへ触らないで。
屁十はおちづの腰へ手をかけ、すばやく脚のほうを抱きあげた。おちづは逆上した。こんなにもやすやすと、かれらの自由にされる自分がわからなかった。
――畜生、殺してやるぞ。
頭の中は怒りのために逆上しているが、躯は痺れたようになり、手足の力もぬけていた。
「砂利場へもちこめ」
屁十が云った。そして、二人はおちづを抱えて、すばやく暗い町を走りだした。
三
金杉橋の東の河岸に、ずっと将監橋へ寄って砂利置場があった。
そこは片側町で、繩や蓆をあきなう店や、砂や砂利、また土屋などが四五軒もあり、それらの大きな納屋が並んでいるため、夜になるとまっ暗で、あまり人通りもなくなるのであった。
屁十と三島とは、おちづをその河岸へ運んでいった。
かれらのうしろから、黒い人影がついて来て、砂屋の納屋のほうへ、つぶてのように消えたが、かれらはむろん気づきもしなかった。