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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
六
「そりゃあそうだけれど、おめえだってもう赤ん坊じゃあねえんだし、そのつもりになればどっかへ、奉公にだってへえれるしよ」
「いやいや、そんなこといやよ」
抱いた手に力をいれ、半次の胸へ顔を押しつけながら、おちづはあまえた声で身もだえをした。
「あたし奉公になんぞいかないわ、あたしは一生半ちゃんの側にいるの、半ちゃんが地獄へゆくなら、あたしだって地獄へいってよ」
「ばかなこと云うなよちい公」
「ほんとよ、あんたといっしょなら地獄へだってどこへだってゆくわ、あたしあんたと離れたら生きてゆけないのよ」
半次はおちづを押しのけようとした。おちづの躯の躰温が、これまでになく激しく感じられ、髪の匂いも咽せるほどに思われた。
六
「あたし半ちゃんに会うまえは、世の中も人間も、ただ憎くて憎くて、みんな洪水で流されるか、火にでも焼かれてしまえって思っていたの」
おちづはもっとすり寄った。
「おっ母さんと弟の金坊が水で死んでから、あたし二十日ばかり町内の厄介になっていたことがあるわ、そのあいだにどんな扱いをされたかわかるでしょ、乞食よりもひどい、犬も食わないような喰べ残りの御飯に、辻番の裏の物置へ寝かされて、一日じゅう走り使いや子守りをさせられて、おまけになにかっていえば厄介者ってどなられたわ」