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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「おめえばかりじゃねえ、おいらだっておんなじこった」
「だから世間や世間の人たちを憎んだり、いっそおっ母さんたちといっしょに死ねばよかったと思ったものだけれど、この頃では生きていてよかったと思うようになったわ」
彼女は半次の胸へつよく頬を押しつけた。
「憎んでいた町内の人たちの気持も、少しずつわかってきたの、みんな自分たちのことで精いっぱいなんだもの、厄介者までそう親切に世話のできるわけがないわ」
「大人みたいなことを云うなよ」
「あたし十五よ、半ちゃん」
「重てえからどけよ」
半次は胸の上からおちづの頭を押しのけようとした。おちづはそれを押し返し、両手できつく半次に抱きついた。
「あたし十五になったのよ」
とおちづは続けた。
「十五っていえば、もうお嫁にゆく人だってあるでしょ、世間を見る眼や、ものの考え方も変らずにはいないわ、初めはあたし半ちゃんを護っているつもりだった、死んだ弟のような気がして、弟を護るように半ちゃんを護っているつもりだったの、そのために生きる張合もできたし、ぐれて悪い女にもならずに済んだわね、――でもこの頃になってからわかったの、あたしは半ちゃんを護ってたんじゃなくて、半ちゃんに護られていたんだってことが」