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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

「ごようすでわかります」

女はそう云って、いかにも心配そうな、心のこもった調子で続けた。

「お願いですわ万三郎さま、その手紙になんと書いてあったか仰しゃって下さいまし、文句を伺えば敵がなにをしようとしているか、およそわたくしにも見当がつきますから」

「いや、その心配は御無用です」

万三郎はきっぱりと云った。

「私はこれでも男ですから、自分のことぐらいは自分でします、それより雨もだいぶ小降りになったようだし、お帰りになるのならそこまでお送りしましょう」

女は黙って立ちあがった。

五

つなと名乗る女は、万三郎がとりあわないので怒ったらしい。自制してはいるが、しらけた表情は隠すことができなかった。

「ようございます、つなは疑われたまま帰ります」

声はいかにも悲しそうだった。

「念のために申上げておきますけれど、休之助にいさまからお指図のあるまで、決してこの家を出ないようにして下さいまし、あなたはすっかり勘違いをしていらっしゃるのです、いまにわかりますけれど、敵はどんな手を使うかもしれないのですから、どうぞこのことだけはお忘れにならないで下さいまし」

そして彼女は部屋を出た。