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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

二

「そこで鬼六に捉まったんだね」

「そうじゃないの、そのときは大山帰りの親切なお爺さんに助けてもらったのよ」

おちづは溜息をついた。

「親切でやさしくって、ほんとにいいお爺さんだったわ、――でもいい人って大抵お金がないもんね、そのお爺さんも木賃宿へ泊って、自分でお粥を拵えてあたしに喰べさしてくれたわ」

「そういうものらしいね、世の中ってものは」

誘われたように松吉も溜息をついた。

「金持にはろくな者はいないし、善い人は貧乏、――そんなところが世間の相場らしいよ、いくら御時勢が変っても、こればかりは変らないようだからね」

二

「そのお爺さんは江戸へ帰るところだったわ」

とおちづは続けた。

「あたしにも江戸へ帰れと云うの、あたしお伊勢さまへぬけ参りにゆくと云ってあったでしょ、お爺さんはそんなことはやめて江戸へ帰れ、途中でどんな災難にあうかもわからないからって。

でもあたし帰る気にはなれなかった、どんな苦労をしてもいいから、紀州という処までいって、半ちゃんに会うつもりだったの、その話を聞かれたのね、こっちは気がつかなかったけれど、あたしとお爺さんが話しているとき、そばにいたへんなお婆さんが、急にこっちへ話しかけたのよ。