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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

「向うの壮大な建物に比べて、こいつはまたおそろしく古ぼけた、うす汚ない造作じゃないか、こっちまで金がまわらなかったのかな」

五

まもなく若い女中が二人で、茶と菓子を運んで来、行燈に火をいれて去った。

「ただいますぐおみえになりますから」

女中の一人がそう云ったが、それっきり小半刻も待たされた。

口で小半刻というけれども、独りで一時間も、ぽつねんと待つのは楽ではない。囲んでいる樹立の彼方には、母屋の二階の灯が見え、すでに絃歌の声も聞えはじめた。

「どうしたんだいったい、冗談じゃない腹が減ってきたぞ」

菓子もきれいに喰べ、茶も飲んでしまった。あさましいはなしではあるが、いちど空腹感に気づくと、それを待ってでもいたように腹が鳴りだした。

――ぐっぐっぐっ、くう。

などというのである。

「おい、よさないか、みっともない」

彼は自分の腹部に云った。

「相手が来て、聞かれたらどうする、おれたち一統の恥辱じゃないか、少しは辛抱しろ」

――くうくうくう、ぐるるる、くう。

「こいつは呆れたもんだ、こ、――」

万三郎はふっと眼をあげた。

樹立の中をこっちへ、提灯の光りが近づいて来た。