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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「そのほうは、――彼とどういうかかわりがあるのか」

「渡辺さんが江戸へ帰る途中で会い、そのまま浅草の裏に家をかりて、いっしょに住んでいます、申しおくれましたが、私は常陸のくに石岡在の郷士の二男で」

「いや、名を云うには及ばない」

相手は首を振り、それからおもむろに、脇差を袋から出した。鞘から鍔、目貫と見てゆき、鞘をはらって中身を検めた。刀を見る作法などは知らぬかのように、ごくむぞうさに見て、元のようにおさめると、それを下に置きながら云った。

「――蕨めしをたべるか」

六

そうでなくってもだめだったろうが、こっちは空腹なので、なんの疑う余地もなかった。

――蕨めし。

と聞くなり、思わずにこりとした。そうして、またしても腹が鳴りだすので、それをごまかすために高い声で云った。

「結構でございますな、蕨めしというのはまだ聞いたこともなし、もちろん喰べたこともありません、想像するだけでも美味そうですが、やはりどこか田舎のほうの名物でございますか」

「たぶんそうだろう」

相手もにやっと笑ったようであった。覆面しているのでよくわからないが、その眼つきが笑ったようにみえた。