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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
七
――これは失敗だ、大失敗だ。
彼は玄関へ戻った。
「神妙にしろ、刀を捨てろ」
庭のほうから呼びかけた。
「もうれる途はない、神妙にしないと射殺すぞ」
「卑怯者――」
万三郎はどなり返した。
「たった一人のおれを、それほどの人数でなければやれないのか、さっきの男を出せ、あの覆面をした男はどこにいる」
「やかましい、刀を捨てろ」
万三郎は柱を楯にとっていた。しかし相手は人数が多い、問答をしているうちに、隙をみつけたのだろう、脇のほうから突然、ぴゅっ、と矢が飛んで来て、彼の肩先を射抜いた。
着物だけを射抜いたのであるが、万三郎はあっと叫び、おおげさによろめいて、どしんと壁にぶっつかり、そのまま横さまに、ずるずると倒れた。
もちろん射倒したと思ったのだろう、なにか叫びながら、三人の若侍が入って来た。
万三郎は苦しそうに呻いた。
「大丈夫か、気をつけろ」
そんなことを云いながら、三人はこっちへ近寄った。かれらの呼吸が聞えた、とたんに、万三郎が大喝し、はね起きざまに刀を振った。
「わっ、――」
悲鳴をあげて一人が倒れ、二人は身を翻して逃げた。
逃げてゆく二人のあとから、その二人とすれすれに、万三郎も外へとび出した。