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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

「じたばたするな、騒ぐと斬るぞ」

万三郎はにっと微笑した。

でかい権兵衛が、つい今しがた、火繩をかけろ、と云っていた。もし小さい権兵衛が、云われるとおりにしていたら、誰かが射たれたことだろう。

――うまくいった。

まるで諜し合せたようであった。二人の権兵衛を(疲れさせるために)からかっていたことも、休之助たちが救助に来た時刻も、お誂えどおりになった。が、――万三郎はふと、権兵衛の一人がいま「鳴子を引け」と叫んだことを思いだした。

――救援を求める合図だ。

万三郎はまた仕切戸に躯をぶっつけながら叫んだ。

「外に注意して下さい、休さん、助勢の者がやって来ますよ」

だが、そのとき早くも鍵を廻す音がし、戸がさっと開かれた。

休之助と斧田がいた。

「やあ、済みません」

万三郎が云いかけると、休之助は眼もくれずに、二人の権兵衛をせきたてて、万三郎のあとへかれらを押し込めた。

「あ、ちょっと待って下さい」

万三郎は追っていって、

「私のを取られたから代りを貰っておきますよ、どうせ鰯みたいな代物でしょうがね」

そしてでかい権兵衛の刀を取って腰に差し、相手の肩をやさしく叩いた。