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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
四
徹之助はにわかに緊張した。
「すると、灯をつけない舟が三ばい、水音を忍ぶように入ってまいりました」
「水門の番士になにか云わなかったか」
「申したかもしれませんけれど、でも、番士からすぐに知らせたのでしょうか、舟が着きますと同時に、御殿のほうから提灯を持って、五人ばかりの人が駆けつけてまいりました」
「そして、その舟の者たちは」
「全部でおよそ十二三人でございましょうか、提灯の光りでちらと見えただけですけれど、お一人だけ、際立って立派な服装の方がいらっしゃいまして、舟からあがるとすぐに、他の方々が、その人を護衛するように取囲み、なかの一人が、
――お屋形さまであるぞ、粗忽するな。
と申されますと、迎えに出た人たちは、地面へ膝をついて平伏しました」
「そうか、そうか、――」
徹之助は昂奮して、片手で自分の膝をきっとつかんだ。
――いよいよ来た。
と彼は思った。
――左近将監だ。
幕府の硬化と、加波山、田辺の焼打ちとで、左近将監頼興が江戸へ来た。おそらく大勢挽回のためであろう、さもなければ、かねて通謀している大名と、江戸でなに事か起こすためかもしれない。いずれにもせよ、その情況から判断して、頼興だということに間違いはないと思った。