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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
四
ということは、万三郎の性格を知っているかよにはよく了解ができるのであった。
――誰だって万三郎さまにはかなわないわ。
かよは心のなかで呟いた。
――万三郎さまの底無しの愛情にかなう者はありはしないわ。
半兵衛は語り終った。
「私は新しい世界を知ったように思った、慥かに、暗い世界から明るい世界へ出た、これはまだ私の知らない、初めて見、初めて感ずる世界だ、しかし私はもう石黒半兵衛ではない」
「――どういう意味で」
「花田さんは私に、剣士として立直れと云ってくれた、だがそれは不可能だ、剣の道は清高廉直でなければならない、私はいちど節操を売った。剣士として立直ることは、かつて剣士であった石黒半兵衛の良心がゆるさない――だから、私は自分の過去のつぐないをしようと決心した」
半兵衛は初めて力づよくかよを見た。
「私は花田さんたちの仕事に、蔭から助勢をするつもりだ、私にできるのは剣を使うことだけだが、せめてその剣でだけなりとお役に立ちたい、――こういうわけでやって来たのだ」
そして初鹿野の宿でかよを見かけ、それからずっと駕籠のあとを跟けて来た、ということであった。
「よくわかりました」