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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

五

女は白い美しい歯をみせて笑っていた。

紫色の大柄の滝縞の着物に白っぽい帯をしめ、派手に牡丹を染めた羽折を重ね、片手につぼめたままの日傘を持っている。

大きな商家の娘といったつくりであった。

眼と眉のあいだのひらいた、なか高のうりざね顔は、忘れることのできないものだ。あの夜もずいぶん嬌めかしかったが、いまこの日中の往来に立って、こちらへ笑いかける眼もとも、あでやかに嬌めいてみえた。

――つなさん。

と思わず云ったが、次の刹那には、万三郎の顔にもにっと微笑がうかんだ。

――この偽者め。

彼は微笑とともに会釈した。

「失礼ですがごらんのような始末で、いま役人が来るそうですから退散します」

「まあお待ちあそばせよ」

女はしなのある手ぶりで止めた。

「この男たちは評判のあぶれ者ですから、お役人が来たってあなたが咎められるような心配はございませんわ」

「しかし面倒ですからね」

「ではごいっしょに」

と女はこっちへ寄って来た。万三郎はてれた。群衆はまだあっけにとられて眺めていた。冗談ではない、彼は足早に横丁へ曲った。

縹緻もめだつうえに着ているものが派手だから、女の姿はひどくひと眼を惹いた。