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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

ほうは不得手でしてね、ただなにかしら耳に残ってるというだけなんだが、――かがいというのは慥か、一年に一度、男と女がむやみに集まって、筑波山の上で歌ったり踊ったり酒を飲んだりして、お互いに好きな同志がその、――いや、いや、つまり、つまりそれは」

彼は激しく咳をした。ひどく苦しそうであるが、空咳だということは明瞭であった。

つなはふと立停った。

万三郎の言葉など、まったく聞いていなかったかのように、日のいっぱいに当っている斜面へ近寄り、枯草の根の土を、きれいな指で掻き分けながら、なにやら青い草の芽のようなものを摘み採った。

「なんですか、それは、――」

万三郎が脇から覗いた。

つなは答えなかった。それはまるくふっくらとして、浅緑の葉を重ねたようなものであった。土からほんの僅かに尖端を出している、万三郎にはわからないが、つなはめざとくみつけて、摘み採っては、持っている小さな手籠に入れた。

「ああわかった、それはきっと春の七草のどれかですね、薺とかはこべらとか、きっと薺ですよそれは」

つなは思わず失笑した。

「でまかせを仰しゃるのね、これは蕗の薹でございますよ」