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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「しかし事実なんですから」

彼は汗をかき始めた。

「貴女からみると偶然すぎるかもしれない、私が作りごとを云っていると思われるかもしれないが」

「わたくしなにも思いは致しません、ただかよさんから詳しく聞いていたので申上げるだけですわ」

「あの人が、話したんですって」

「わたくしが押籠められているとき、かよさんが来ては話してゆきました、和幸という茶屋が、破戒僧たちのいかがわしい出合い茶屋だということや、あなたとお二人きりで、どんなに仲良くお酔いになったかということなどを、――それはそれは熱心に、詳しく、二度も三度も話してくれましたわ」

「それで貴女は、まさかそれを、信用なさったんじゃないでしょうね」

「信じませんでした」

「有難う、さすがに貴女です」

彼はわれ知らずおじぎをした。けれどもそれは早すぎた。つなはきらきらと光る眼で、するどく万三郎を見あげながら云った。

「お礼を仰しゃることはありませんわ、信じなかったのは話を聞いたときのことで、今では本当だったのだと思っているのですから」

「それはばかげていますよ」

「どうしてですの、――あの晩、わたくしたちはすっかり取巻かれてしまいましたわ、紀伊家の侍たちや、まだあとから古木家の男たちが幾らでも加勢に来たでしょう。