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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

紅雀

一

一

「やい待てちび」

いせいのいい声でどなりながら、七八人の少年たちが追って来て、こっちが吃驚しているうちに追いぬき、前へまわって立ち塞がった。

みんな竹や木の棒切れを持っていた。年は十二三から大きいのは十五くらいにもなるらしい。こっちは人一倍躯が小さいので、すっかりなめているようだった。

深川の冬木河岸で、堀に沿った道には往来の人もなく貝殻まじりの乾いた道が、明るく秋の日をあびていた。

「てめえどこの島のもんだ」

いちばん大きい少年が、持っている棒をゆらゆらさせながら、凄んだ顔でつめ寄った。

「流れついたお精霊さまの茄子みてえな面をしやあがって、いってえどこから迷いこんで来やがったんだ、どこのもんだ」

「うるせえや」

こちらは平然とやり返した。

「おれが誰だか知りたけりゃあいって聞いてみろ、こっちは銀座から向うは芝、麻布、品川は大木戸まで、金杉の半次といえば知らねえものはありゃしねえ」

「この野郎なまあ云うな」

「知らねえものはありゃしねえ、おらあ金杉の半次ってえもんだ、それがどうした」

彼はまっ黒な顔を反らせ、大きな眼で相手を見まわしながら、さもいさましく喚いた。