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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

おちょぼ口で、眼が細く、眉毛のやや尻下りな顔つきは、下町育ちというより、どこかの田舎の大地主の娘といったふうな、やぼったさとおちつきが感じられた。

「貴女のことは林から聞いていました」

お互いの挨拶もそこそこに、徹之助が云った。

「少し事情があって、悠くり話している暇がないのですが、なにか変ったことでもあったのですか」

「はい、お知らせすることが二つございます、一つはお坊ちゃまが急に御病気におなりなさいまして、医者のはなしではかなり重いということでございます」

「それは松之助のことですね」

八重は「はい」と云った。まだ屋敷奉公に馴れない者の「はい」である。徹之助は自分の子のことなどどっちでもいいという顔つきで、次を促した。

「もう一つというのは、――」

「こちらに花田万三郎さまという方がいらっしゃるでしょうか」

「おります」

「その方が下総のほうへおいでになりましたでしょうか」

「ゆきました」

「それは危のうございます」

八重は不安そうに云った。

「そのことがわかって、小田原河岸のお屋敷から、かよという女の人と、侍が五人、追手になってゆきました」

「かよ、――という女、ですって」