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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

二

「おめえもそろそろいろけがついてきた頃だろう、ええちい公」

屁十が前へまわって来た。

「色も白くなったし、胸や腰っつきなんぞ、めっきり娘らしくなってきたぜ、嘘あ云わねえ、まったくのところきれいになるばかりだ」

「うるさいね、どいとくれよ」

おちづは躯をよけた。

「つまらないことをすると承知しないよ」

二

「そんなに怒るなよ」

屁十はにやにや笑った。

「おめえが娘らしくきれいになったって、褒めているんじゃねえか、なあ三島、そうだなあ」

「そうらとも、褒めてるんら」

三島は手で口の端を撫でた。躯も巨きいが、その手もばかげて大きかった。口の端を撫でて、その手を長半纒の腰へ擦りつけ、それから舌ったるい調子で云った。

「おめえがきれいになったってよ、ほんとられ、褒めてるんら」

「どいてくれってんだ」

おちづは叫んだ。

「屁十や三島なんぞにそんなことを云われると反吐が出そうになる、ひとを甘くみるとあとで後悔するよ」

「なにをそう怒るんだ」

屁十が寄って来た。

「おらあいつもおめえに同情しているんだぜ、家もなく親きょうでえもなし、世間さまからは冷たい眼で見られて、山猫のちい公なんぞと云われてるのを」