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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

万三郎が思わず叫んだ。

六

万三郎が叫んだのは反射的であった。つい知らず口から出たのであった。

――またぞろあの女か。

と思ったから。

「私は谷の中腹で、藪の中にいたんですが」

と又平は続けて云った。

「かれらが登ってゆきながら話すのを聞くと、どうやら今夜から荷駄が来るらしいんです、三晩ぐらいで運べるだろう、などと云っていました」

「それはなによりの知らせだ」

休之助は頷いて、てきぱきと云った。

「では今夜から見張りは、朝まで交代で続けるから、三郎は早く夕食を済ませて、ひと眠りしておくほうがいいだろう」

「その男をどうしますか」

「これはおれが片づける」

「お願いです、助けて下せえ」

曲者は哀れな声をだした。

「おらあすぐこの下の長岡の人間で、嘉平の伜の伝次っていう者であんす、おらばかりじゃねえ、二十六人も、みんなあいつらに騙されて、なんにも知らずに使われていたですから」

「助けてやれないという理由はもうわかっている筈だ」

「よくわかったです、お話を聞いたからわかったすがほかの二十六人はなにも知らねえ、なにも知らずに謀反人に使われているであんす、それがみんな罪人になっていまにお仕置にされるというのはあんまりむごい、それは旦那あんまりであんすだ」