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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
六
たとえ相手がつなでなくとも、彼には澄ましていることができないのであった。
「うまくゆきましたよ」
万三郎はついにこにこした。
「ひどく腹が減ってるんです、いま足を洗って来ますからなにか喰べさせて下さい」
「すぐお支度を致しますわ」
つなもいそいそしていた。
――やっぱり愛しているんだ。
万三郎は裏へ出ながらそう思った。草鞋をぬぎ、足を洗うあいだも、鼻唄ぐらい歌いたいような気持だった。
「おれという男はよっぽどのお人好しなんだな」
こう呟きながら、独りでにやにやした。
万三郎が雑炊の膳に向うと、斧田又平が帰って来、また休之助が起きた。万三郎は手早く食事を済ませて、紙と筆を取出し、観音谷の地形と貯蔵所の見取図を書いた。
「あの男との身代りはうまくいったろうな」
休之助は洗面して戻るとすぐにそう訊いた。斧田は雑炊を喰べ始めていた。
「うまくいったと思うが、はっきりしたことは今夜でないとわかりません」
「どうしてだ」
「私のほうはうまくいきましたが、あの秀という男が戻ってからどんな事があるかもわかりませんからね」
秀は伝次と組んで見廻りに出るのである。夜半に交代で戻るとき、万三郎がその身代りになって潜入し、秀は待っていて、朝三時の交代に万三郎と入れ代って帰ってゆく。