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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
五
月の光りにすかして見ると、小さな池の中に一本足で立って、首を翼の中へ隠して眠っているのもいた。
「きようなまねをするわね」
おちづは感心したように首を捻った。
五
鳥舎のすぐ向うに石倉がある。
それも升屋の自慢の一つだそうで、どこかの遠い島から持って来た、軽石のようなもので造ってある。火に包まれても中まで熱が透らないし、大きな地震にも倒れないということであった。
おちづはその脇を通って、築山のほうへゆこうとした。
すると、その石倉のところで、足もとになにかちょろちょろ動く物をみつけた。
白い紙玉のような物が、右に左に動きまわるのである。眼の誤りではない、月の光りの下で、はっきりと白い物の動きまわるのが見えた。
「――しっ、なんだ」
おちづはこう云って、とんと足踏みをした。すると、その物は驚いたとみえてちちちと鳴き、向うへ走ってゆこうとしたが、反対にするすると、石倉のほうへ引き戻された。
おちづは身を跼めて、その物をよく眺めた。
「なあんだ、鼠じゃないの」
それは正に小さな鼠であった。
「どうしたのさ、おまえ」
おちづは鼠に話しかけた。
「そんな処でなにをまごまごしているの、自分の巣がわからなくなったのかえ、きっとまだおちびさんで、迷子にでも、――あら、紐でいわかれてるじゃないの」