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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

七

「そんな必要はない」

休之助は首を振った。

「巡検使の権限で調べるのだ、荷駄の内容がなんであるか云ってもらいましょう」

「――甲府城の、用度品です」

「どういう品です」

「――器具、帳簿――」

「器具はどんな物です」

相手は口をつぐみ、行列のほうへ振向いて、なにか合図をした。

「それはまずい、よしたほうがいいな」

休之助が云った。

「こっちにも用意がしてあるんだ、悪あがきをしても逃げられやしないぜ」

そして手を振った。

待っていたように、道の左側から鉄砲組が走り出て来て、すでに火繩のかかっている銃口を、一斉に行列のほうへ向けた。

松野次郎右衛門は蒼くなった。

塗笠を冠ったもう一人の馬上の武士も、行列の者たちも虚を衝かれたようすで、その場に釘付けになったようにみえた。

休之助が小林支配を見た。

「荷駄を調べろ、――」

と小林重兵衛が云った。

上田三郎助の組が出てゆき、七頭の荷駄の荷をおろさせた。休之助はいっしょにゆきながら、

「人は片寄れ、荷駄は右、人は道の左へ片寄っていろ、動くな」

そう叫んだ。

道にはもう人馬の往来が繁くなっていたが、それらはこの一団の前後で停められ、遠くから好奇の眼で眺めていた。