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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
「実に可哀そうなことをした」この憐みの心は自ら責むる心と一緒になって何時でも岸本に起って来た。
異郷の旅の心を慰めるために、岸本は自分の部屋にある箪笥の前に行った。箪笥とは言っても、鏡を張った開き戸のある置戸棚に近い。その抽筐の中から国の方の親戚や友人の写真を取出した。義雄兄の家族一同で撮った写真も出て来た。それは最近に東京から送って来たのであった。高輪の家の庭の一部がそっくりその写真の中にある。南向の縁側の上には蒲団を敷いて坐った祖母さんが居る。庭には嬰児を抱いて立つ輝子が一番前の方に居る。二人の少年が庭石の上に立っている。その一人は義雄兄の子供で、一人は繁だ。兄さんらしく撮れた泉太の姿をその弟の傍に見ることも出来る。義雄兄が居る。嫂が居る。嫂はその家で生れた男の児を抱いている。岸本は兄夫婦の写真顔をすら平気では眺められなかった。一番後方に立つのが変り果てた節子の面影であった。娘らしく豊かな以前の胸のあたりは最早彼女に見られなかった。特色のある長い生えさがりは一層彼女の頬を痩せ細ったように見せていた。
「自分は、人一人をこんなにしてしまったのか」