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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百二十

わが常に求むる真実を過ちの対象に見出したるは、一面より言えば不幸なるがごとくなれど、必ずしも然らで、過ちを変じて光あるものとなすべき向上の努力こそわが切なる願いに候。

――おのが生きむとする道を宗教に択びたるは、一つは神を求むる心より、一つはかの歎きの底より浮びたる時にあたり恐るべき世の冷さに触れ、その悔悟も熱心も遂に多くの罪人等の自棄に陥る道に到るべきことを見出したるに外ならず候。宗教につきては、ここにはわが志を申上ぐるにとどめ申すべく候。

――右は意を尽さざるところ多けれども、これによりてわが心事の一端なりとも御斟酌下され候わんには幸にこれあり候」

百二十

節子が父に宛てたという手紙を手にして見ると、いよいよ彼女の立場の明かに成ったことが岸本にもよく感じられた。強烈な威圧の力も結局小さなたましい一つをどうすることも出来ないということをも感じられた。岸本は彼女から自分の方へくれた手紙をも読返して見た。

「昨日、布施さんが見えまして、いよいよ本当にお断りいたしました。一昨々日姉が参りました時、まだお父さんはあの縁談に未練があったんでございましょう、祖母さんと姉にいろいろ相談しまして、二人から私にそれを言わせたんですよ。