轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
七十三
その中でも彼は東京の留守宅への仕送りをして遠く子供を養うことを忘れることは出来なかった。そろそろ自分も懐郷病に罹ったのか、それを考えた時は実に忌々しかった。どうかすると彼は部屋の板敷の床の上へ自分の額を押宛てて泣いても足りないほどの旅の苦痛を感じた。
七十三
モン・パルナッスの墓地の側を通過ぎて、岸本は岡の画室の前へ行って立った。
青黒い色に塗った扉を内から開ける鍵の音をさせて、岡が顔を見せた。鶯の鳴声でも聞くことの出来そうな巴里の場末の方へ寄った町の中に岡の画室を見つけることは、来て見る度に旅の不自由と暢気さとを岸本に思わせた。「老大」と言って、若い連中から調戯われるのを意にも留めずにいた岡等より年長の美術家もあったが、その人の一頃住んだ画室も同じ家つづきにある。
「岸本さん、火でも焚きましょう」と岡は款待顔に言って、画室の片隅に置いてある製作用の縁を探しに行った。
「もう君、火も要らないじゃないか」と岸本が言った。
「でも、何だか火が無いと寂しい――」
岡は画布を張るための白木の縁を岸本の見ている前で惜気もなくへし折って、それを焚付がわりに鉄製の暖炉の中へ投入れた。