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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
七十八
「でも、よくこんなに見つかったものですね」と節子が言った。
「矢張、苦しんだ揚句だから見つかったんだね。さもなかったら、こんな不思議なところへは出て来なかったかも知れない」
その時ほど岸本は節子と二人ぎりでのびのびと屋外の空気を呼吸したり青空を楽んだりするような位置に自分を見出したことは無かった。節子はまた、仮令僅の時でもそれを自分等二人のものとして並び腰掛けながら送ることを楽みに思うという風であった。
「そうそうお前に聞いて見ようと思うことがあった」と岸本は言った。「お前からくれた手紙の中に――ほら、何もかも話せる時が来たなんて――お前は俺に書いてよこしたことが有ったろう。こんなに早くその時が来ようとは思わなかった、すくなくも二三年は待たなければ成らないかと思ったなんて――もしあの時、俺が結婚したら、お前はどうするつもりだったのかね。俺は自分でも結婚するつもりだったし、お前にも結婚を勧めるつもりだった。そのつもりで旅から帰って来た。もし俺が結婚したら――それでもお前は待ってるつもりだったのかい」
「ですから、低気圧が起って来たんじゃ有りませんか」
と節子はすこし顔を紅めながら答えた。