轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

七十二

「巴里には何でも有る」とある巴里人が彼に話して笑ったこの大きな都会の享楽の世界へ、連のある度に彼も出入りして見た。時には異郷のつれづれを慰めようとして、近くにあるビリエーの舞踏場なぞへ足を運ぶこともあり、遠くモン・マルトルの方面へ通りすがりの同胞の客を案内して行くこともあった。東京隅田川の水辺に近い座敷で静な三味線を聞くのを楽しみにしたと同じ心持で、巴里の劇場の閉ねる頃から芝居帰りの人達が集まる楼上に西班牙風の踊なぞを見るのを楽みにすることもあった。しかし何が彼をして一切を捨てさせ、友達からも親戚からも自分の子供からも離れさせたか、その事は一日も彼の念頭を去らなかった。

七十二

巴里の最も楽しい時が来た。同じ街路樹でも、真先にこの古めかしい都へ青々とした新しい生気を注ぎ入れるものはマロニエであったが、後れて萌え出したプラタアヌも芽から葉へと急いで、一日は一日よりその葉が開き形も大きく色も濃く成って行くうちに、早や町々は若葉の世界であった。人の家の石垣越しなどに紫や白に密集って咲く丁香花もさかりの時に成って来た。この好い季節は岸本の心を活きかえるようにした。