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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百二十四

中にはまだ若々しい聡明な面ざしのものも混っていた。

「あんな人達まで今に戦争に行くんでしょうか。僕等のことにしたら、短い袴を穿いて学校へ通ってる時分の年齢ですがなあ」

二人はこんな言葉をかわしながら、いずれ国難に赴こうとしているような仏蘭西の若者達を見送った。

過ぐる年に比べると並木の芽出もずっと後れた。プラタアヌの木なぞは未だ冬枯そのままであった。モン・パルナッスの並木街をノオトル・ダムの分院の前あたりまで歩いて行くと、その辺には漸くマロニエの青い芽が見られた。

「もうそれでもマロニエの芽が見られるように成りましたね」

牧野は岸本と並んで歩きながら言った。

「牧野君もよくあの画室に辛抱しましたね。なんだか今年の冬は特別に長いような気がしました」

と岸本も足早に歩きながら答えた。彼の胸には逢いに行く岡のことや、自分の旅のことが往来した。

百二十四

「君等は感心だ。よくそれでもお互に助け合うね」

と岸本はパスツウルの通りまで歩いて行った頃に牧野の方を見て言った。

「僕のところへ来るモデルもそれを言いましたよ。『日本人は皆貧乏だ、そのかわり感心に助け合う、他の国から来てるものには決してそういうことは無い』