轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

二十七

彼は四つ並んだ幻の墓の方へ否でも応でも一歩ずつ近づいて行くの外はなかった。

一日は空しく暮れて行った。夕日は二階の部屋に満ちて来た。壁も、障子も、硝子戸も、何もかも深い色に輝いて来た。岸本の心は実に暗かった。日頃彼の気質として、心を決することは行うことに等しかった。泉太、繁の兄弟の子供の声も最早彼の耳には入らなかった。唯、心を決することのみが彼を待っていた。

二十七

節子が何事も知らずに二階へ上って来た頃は、日は既に暮れていた。彼女は使の持って来た手紙を叔父に渡した。それを受取って見て、岸本は元園町の友人が復た手紙と一緒にわざわざ迎えの俥までも寄してくれたことを知った。

友人を見たいと思う心が岸本には動かないではなかった。しかしその心からと言うよりも、むしろ彼は半分器械のように動いた。元園町の手紙を読むと直ぐ楼梯を降りて、そこそこに外出する支度した。

暗い門の外には母衣の掛った一台の俥が岸本を待っていた。節子に留守を頼んで置いて、ぶらりと岸本は家を出た。別れを友人に告げに行くつもりでは無いまでも、実際どう成ってしまうか解らないような暗い不安な心持で、彼はその俥に乗った。