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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

二十四

その七日の後には、この落魄した太一の父親を救おうと決心した。

「節ちゃん、叔父さんは鈴木の兄さんを連れて、国の方へ御辞儀に行って来るよ」

岸本はその話をした後で、別に彼の留守中に医師の診察を受けるようにと節子に勧めた。節子はその時の叔父の言葉に同意した。彼女自身も一度診て貰いたいと言った。幸に彼女の思違いであったなら。岸本はそんな覚束ないことにも万一の望みをかけ、そこそこに旅の仕度して、節子に二三日の留守を頼んで置いて行った。

二十四

実に急激に、岸本の心は暗くなって行った。郷里の方にある姉の家から帰って来る途中にも、彼は節子に言置いたことを頼みにして、どれ程医師の言葉に万一の希望を繋いだか知れなかった。引返して来て見ると、余計に彼は落胆した。

「節ちゃん、そんなに心配しないでも可いよ。何とか好いように叔父さんが考えて進げるからね」

こう岸本は言って、もしもの場合には自分の庶子として届けても可いというようなことを節子に話した。

「庶子ですか」

と節子はすこし顔を紅めた。

不幸な姪を慰めるために、岸本はそんな将来の戸籍のことなぞまで言出したもののその戸籍面の母親の名は――そこまで押詰めて考えて行くと到底そんなことは行われそうも無かった。