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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百三十三

「お客さまはお泊りでございますか」

とやがて女中が訊きに来るように成った。

「子供は今夜は早く寝るが好い……お前達はもう寝よや……泉ちゃんも繁ちゃんもお休み」

と民助に言われて、子供等は何かなしに嬉しそうに床に就いた。女中は客の夜具を運んで来て、離座敷の潜り戸を閉めて行った。母屋の台所の方では未だ宵の口と言ってもいいほどの時ではあったが、宿の主人の笑声一つ離座敷へは聞えて来なかった。

「時に、懺悔の一件だ」

と民助が切出した。

岸本はその話の出るのを待受けていた。民助兄がここへ訪ねて来る前に谷中の方で既に義雄兄との協議のあったことをも想像していた。それにしても、節子を処分しようとしている義雄兄からの依頼を受けてやって来た長兄を前に置いて、岸本は何を話していいかも分らなかった。

「まあ廻りくどいことは訊くまい……」と民助が言った。「貴様が旅に出掛けるまでのことは俺の方では問わない。旅から帰って来てだナ、それから復た節ちゃんと関係があったか、どうか――それを訊こう」

「ありました」と岸本は簡単に答えた。

「それはどうも怪しからん。国へ帰って来てから復た関係をつけるなんて、実に言語道断だ。