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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百二十三

へと志す幾多の新人のあることに想い到ると、そうした再生の芽を古い古い羅馬旧教の空気の中にすら見つけることが出来るように思った。

その芽が岸本にささやいた。

「お前も支度したら可いではないか。澱み果てた生活の底から身を起して来たというお前自身をそのまま新しいものに更えたら可いではないか。お前の倦怠をも、お前の疲労をも――出来ることならお前の胸の底に隠し有つ苦悩そのものまでも」

百二十三

町に出て往来の人々に混りたいと思うような午後が来た。岸本は下宿を出ようとして、丁度パスツウルに近い画室の方から訪ねて来る牧野に逢った。

岡も、小竹も相前後して既に英吉利の方から巴里へ戻って来ている頃であった。牧野は岡の意中の人が国の方で他へ嫁いたという消息を持って来た。戦争前、美術学校の助教授が巴里を発つという際にも、その他の時にも、まだ岡は一縷の望みをそれらの人達の帰国に繋いでいた。最早岡の意中の人も行ってしまった。それを思いやって、岸本は牧野と顔を見合せた。

「今僕の画室へ岡や小竹が集まっています」と牧野が言った。「どう慰めようもなくて僕等は困ってるところなんです。あなたにでも来て頂かなくちゃ――」