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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

八十二

しかし御申越の様子では万事好さそうにも思われるし、何等の助言をも姪から自分の許へは求めても来ないから、自分等は蔭ながらこの事の都合好く運ばれるのを望んでいると書いてよこした。老婦人はまたセエブル地方の大きく美しいことを言い添えて、ここへ暑を避けに来ている幾多の家族は皆友達のようであり、砂上に遊び戯るる子供等を見るのも楽いと書いてよこした。とかく季候は雨勝ちであったが、幸いに日も輝いて来たと書いてよこした。あなたの老友よりともしてよこした。

八十二

思いがけない人の心を読んだという心持で、岸本はビヨンクウルの書記宛にもう一度手紙を書いてやった。そんなにマドマゼエルの結婚談が心配になるなら、東京の番町の友人はマドマゼエルの力に成る人と思うから、万事あの友人に相談するようマドマゼエルの許へ言ってやったら可かろうとした手紙を送った。

この手紙は老婦人の方へ廻って行ったと見え、折返しセエブルの海岸から返事が来た。姪のことで御心配をかけて済まなかったと老婦人は書いてよこした。申すも心苦しいが、姪は我儘者で、彼女の好きなことしかした例がない、もともと彼女は極くきゃしゃに生れついたもので、彼女の母親も父親もあれまでに彼女が育つとは考えなかったほどである、そして彼女の空想のままに彼女の好めるままにさせて置いて両親が黙って視