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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
五十八
と言って節子は微笑んだ。
それぎり、岸本はもうそんな話をしなかった。節子は近くいて見ると、彼は彼女の内部に燃え上り燃え上りするような焔が生々と彼女の瞳にかがやくのを見た。時としては彼女の顔に上って来る血潮が深くかすかに彼女の頬を染めるのを見た。
岸本に言わせると、彼と節子とはまだ一歩踏出したばかりであった。ある意味から言えば、漸くこんな境地まで漕付けたばかりであった。彼は節子をこの世の旅の道連れとして、二人で行けるところまで行こうとした。節子は谷中の方へ帰ってから短い手紙を岸本の許へ送ってよこした。
「どんなに多くの御不自由を御忍びなさることか。それもわたしからと思いますと、ほんとうに苦しゅうございます。どうぞどうぞすべてを御許し下さいまし」
五十八
「『冬』が私の側へ来た。
――私が待ち受けていたのは、正直に言うともっと光沢の無い、単調で眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづくと眺めて、まるで自分の先入主となった物の考え方や、自分の予想していたものとは反対であるのに驚かされた。私は尋ねて見た。
――お前が『冬』