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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

窓という窓の彩硝子は輝いた。あるいは十字架を花の環の形に、あるいは菱形に、あるいは円形に意匠したその窓々の尖端、あるいは緑と紅との色の中心に描かれてある聖者の立像、それらが皆夕日に輝いた。こうしたゴシック風の古い建築物の内部にあっては、その中に置かれた羅馬旧教風な金色に錆た装飾もさ程目立っては見えなかった。あらゆる石の重みと、線と、組立とが高い天井の下に集められて、一つの大きな諧調を成していた。日は長い儀式の中で次第に暮れて行った。窓々に映る夕日も消えて行った。あだかも深い林の中に消えて行く光のように。そこには眼ばたきするように輝いて来た堂内の燈火と、時々響き渡る重い入口の扉の音と、厳粛に沈んで行く黄昏時の暗さとが残った。

岸本がこの寺院を出て、ポン・ナフの石橋の畔へかかった頃は、まだ空はいくらか明るかった。ヴィエンヌ河の両岸にあるものは皆水に映っていた。彼は牧野と二人でのリモオジュの滞在も最早僅に成って来たことを思った。二度とこうした仏蘭西の田舎に来て好きな寺院に腰掛ける時があろうとも思われなかった。バビロン新道の宿を指して歩いて行く途すがらも、彼はこの田舎の都会にある他の寺院にサン・テチエンヌを思い比べて見た。