轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
彼はまだ年の若い節子を助けて、二階に居ながらでも子供の監督を忘れることが出来なかった。家のものは皆屋外へ遊びに出し、門の戸は閉め、錠は掛けて置いて、たった独りで二階に横に成って見るような、そうした心持には最早成れなかった。
岸本は好きな煙草を取出した。それを燻し燻し園子との同棲の月日のことを考えて見た。
「父さん、私を信じて下さい……私を信じて下さい……」
そう言って、園子が彼の腕に顔を埋めて泣いた時の声は、まだ彼の耳の底にありありと残っていた。
岸本はその妻の一言を聞くまでに十二年も掛った。園子は豊かな家に生れた娘のようでもなく、艱難にもよく耐えられ、働くことも好きで、夫を幸福にするかずかずの好い性質を有っていたが、しかし激しい嫉妬を夫に味わせるような極く不用意なものを一緒にもって岸本の許へ嫁いて来た。自分はあまりに妻を見つめ過ぎた、とそう岸本が心づいた時は既に遅かった。彼は十二年もかかって、漸く自分の妻とほんとうに心の顔を合せることが出来たように思った。そしてその一言を聞いたと思った頃は、園子はもう亡くなってしまった。
「私は自分のことを考えると、何ですか三つ離れ離れにあるような気がしてなりません――子供の時分と、学校に居た頃と、お嫁に来てからと。