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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

彼は不自然に抑えられていた子供等の性質が如何に急激に祖母さんや久米の温情の下に緩められたかを見た。その結果は、母親のない子供等を慰めることは出来ても叱ることの出来ない人達に取って、いかに頭痛の種であるかを見た。殊に二番目の繁が一度愚図り始めたら、泣くだけ泣かなければ止まないという風で、日に日に募って行くこの児の駄々は久米をも女中をも泣かせてしまうのを見た。どうしてもこれは自分で養うの外は無い、なるべく自然な方へ頼りの無い子供等を連れて行って彼等の成長を待つの外は無い。こう岸本は考えて、どのみち高輪の家を解散しようと思い立つように成った。彼は自分の子供等のことで、これ以上祖母さんや久米に心配を掛けるには忍びなかった。

そこで彼は一つの試みを思い立った。それは泉太や繁と一緒に下宿へ移るということであった。彼は巴里の方で経験して来た三年の下宿生活が何等かこの試みに役に立つであろうという期待を持った。尤もその事は未だ誰にも言わずにあった。

節子のために再婚を断念して掛った岸本がこうして家庭というものを出てしまうということは、そして旅人の生活に帰って行くということは、寧ろ彼には当然の成行と思われた。