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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「私も子供は控えておりますし、おめおめと国へは帰って来ましたが、しかしこの事のためには今日まで自分の力に出来るだけのことをしたつもりです」

「その点は申し分は無いサ。その点は完全無欠だ。お前も一度死を決したという以上は、その時にこの事は終りを告げたものじゃないか。お前のようにそう気にするところが、そこがお前の性分だ。そこがお前のように学問にでも凝ろうというところだ。そりゃ俺だって、お前の心情を汲まんでは無い。お前が神戸を立つ時にも書けなかった手紙を香港の船の中で俺の許へ書いてよこしたという心持は、俺にも解ってる。その心持が解ればこそ、俺はお前の不始末を引受けた。お前がまた仏蘭西から帰って来た時に、出迎えの人を一切断って、独りでポツンと品川へ着いたなんてことも、俺はちゃんと見てる。そりゃ、まあ、不始末と言えば不始末だが、お前のようにそう気にするなんてことが俺なぞから見れば可笑しい。誰にだってこんなことは有る――みんな似たようなことをやってる――こんなことぐらいが一体、何だ」

百十四

うんと一つ弟の油を絞って置こうというような兄と、甘んじて兄の非難を受けようとして頭を垂れたまま言葉も少く聞いている弟と、この二人が対い合って坐っていた。