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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百十八

として子供等に喜び迎えられていた。

「一寸父さんのところへ御使に来ましたから、その御用を済ましてしまって――それから後で」

と輝子は泉太や繁を言い宥めた。岸本は湯をたやさずにある火鉢の側で輝子を迎えた。義雄兄の方からの返事を聞くまでは彼も落ちつかなかった。

「お父さんが、いずれこの御返事は後から致しますッて――」

輝子は意味ありげに言って、更にきっぱりとした調子で、

「節ちゃんはもう叔父さんのところへお手伝いには上げませんから、そのお積りでいらっして下さい」

こう岸本に言った。輝子は、岸本が悪い顔でもするのを待受けるかのようにそれを言ったが、岸本の方ではもとよりそのつもりであった。

「それは承知しました」

と彼は簡単に答えた。

「それから、お父さんが叔父さんにそう言って下さいッて――『青くなったり、赤くなったりして、自分の為た事を書かなければ食えないかと思うと、御気の毒な商売だ』ッて、そう言って下さいッて――」

輝子を通して聞くこの兄の言葉をも岸本はそのまま受けて置いた。それよりも岸本は祖母さんのことを知りたかった。

「祖母さんにも話してくれたかね――」と彼が訊いた。