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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百三十

何ですか、自分じゃ立派なことでもしてるような顔付をして、すこしも祖母さんやお父さんに悪かったとは思っていないようなんですもの――」

それを聞いて、岸本は節子のために何か言って見ようとしたが、「そりゃ節ちゃんだって悪かったとは思っている」ということと、「しかし節ちゃんは今自分の為ることを決して悪いとは思っていない」ということと、その間には口で言えない領分があった。感じて貰うより外に仕方の無いような領分があった。岸本はある点までは輝子の言うことも聞いて見たいと思って、黙って煙草を燻していた。

「ですから、お父さんもこないだそう言っていましたよ」と復た輝子が言った。「節ちゃんの様子と来たら、まるで洒蛙々々してるなんて――」

「心持の違ったものの中に居ると、そう成るよ。どうして可いか解らなく成るよ」と岸本は言って見せた。「あんまりいろいろなことを言われて御覧、トボケてでもいるより外に仕方が無いからね」

今度は輝子の方が黙ってしまった。岸本は節子と父との隔りが、やがて自分と輝子との隔りであることを思わずにはいられなかった。彼はこんな風に輝子に言って見た。

「つまり、節ちゃんの心持がお父さんには解らないから仕方が無いサ」