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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「まあ、台湾へでも連れて行って見たらばナ、どうまた気が変らんものでもあるまい。その時はその時サ」

「あの人の手は、もう少し治して置くと可かったんですが、嘉代さんの病気でそれなりに成っちまいました。台湾の方へ行って姉さんのお手伝いが十分に出来れば可いが――それを私は心配しています」

「ナニ、台湾の方は内地とは違って気候も熱いしナ、節ちゃんの手なぞも自然に好くなるだろうと俺は見てる」

「何方にしても、あの人がほんとうに生きて出られるようにしてやりたい――それが私の希望なんです。生きて出られさえすれば、それが何よりです」

岸本はまだその他に、節子の志望が宗教へ行くことにあるという話を民助の耳に入れて置こうとしたが、兄は笑って相手にしなかった。

「さあ、これで大体の事は決った――」と民助は言った。「もう一つ断って置くが、節ちゃんの方に心残りがあっても不可からナ、貴様から餞別を贈ることは見合せて貰いたい」

「承知しました。私の方では万事遠慮しましょう。台湾の方へあの人を連れて行って頂くのが何よりと思います」

「義雄も賛成、貴様も賛成だ。俺もまあこれで出て来た甲斐があった。