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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

岸本は灰色な壁のところに立って、その光景を眺めていた。その日は岸本の外に、足立、菅の二人も弔いにやって来ていた。三人とも亡くなった人の同窓の友だ。

「吾儕の仲間はこれだけかい」

と菅は言って、同じ卒業生仲間を探すような眼付をした。

「誰かまだ見えそうなものだ」

と足立も言った。

会葬のために集まった人達は思い思いに散じつつあった。しばらく岸本は二人の学友と一緒に教会堂の内に残って、帰り行く信徒の群なぞを眺めて立っていた。そこへ来て親戚の代りとして挨拶した年老いた人があった。三人とも世話になった以前の学校の幹事さんだ。

「可哀そうなことをしました」

とその幹事さんが亡くなった学友のことを言った。

「子供は幾人あったんですか」

と岸本が尋ねた。

「四人」

と幹事さんは言って見せて、「後がすこし困るテ」という言葉を残しながら別れて行った。

二人の学友と連立って岸本が帰りかけた頃は、会葬者は大抵出て行ってしまった。人気の少い会堂の建物のみが残った。正面にある尖ったアーチ風の飾、高い壁、今が今まで花輪を飾った寝棺がその前に置かれてあった質素な説教台のみが残った。会葬者一同が立去った後の沢山並べてある長い腰掛椅子のみが残った。