轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

岸本は遠い旅の鞄に入れて持って行かれるだけの書籍を除いて、日頃愛蔵した書架の中の殆ど全部の書籍を売払った。それから、外国の客舎の方で部屋着として着て見ようと思う寒暑の衣類だけを別にして、園子と結婚した時からある古い羽織袴の類から日頃身に着けていたものまで、自分の着物という着物はあらかた売払った。

「節ちゃん、これはお前に置いて行く」

岸本は節子を呼んで、箪笥の抽筐を引出して見せた。園子の形見としてその日まで大切に蔵って置いた一重ねの晴着と厚い帯とが、そこに残っていた。その帯は園子が結婚の日の記念であるばかりでなく、愛子の結婚の時にも役に立ち、輝子の時にも役に立った。岸本はそれらの妻の最後の形見を惜気もなく節子に分けた。

「泉ちゃんや繁ちゃんのことは、お前に頼んだよ」

という言葉を添えた。

裏口の垣根の側には二株ばかりの萩の根があった。毎年花をもつ頃になると岸本の家ではそれを大きな鉢に移して二階の硝子戸の側に置いた。丸葉と、いくらか尖った葉とあって、二株の花の形状も色合もやや異っていたが、それが咲き盛る頃には驚くばかり美しかった。狭い町の中で岸本の書斎を飾ったのもその萩であった。