轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

九十八

と呼んで土地の事情に精しいその少年を朝晩に相手とした。牧野は近くにある牧場を選んで画作に取りかかった。そこへ岸本が歩いて行って見る度に、必と牧野の後に足を投出して眼前の風景と画布とを見比べているエドワアルを見つけた。岡の地勢を成した牧場の内の樹木から遠景に見えるリモオジュの町々、古い寺院の塔などが牧野の画の中に取入れられてあった。牛の踏みちらした牧場の草地へはところどころに白い鶏の来るのも見えた。岸本がそこへ行って草を藉き足を投出して見た時は、あの四時間も五時間も高瀬と一緒に警察署の側に立ちつづけたような巴里の混乱から逃れて来たというばかりでなく、仏蘭西の旅に来てからの初めての休息らしい休息をそのヴィエンヌの河畔に見つけたように思った。

九十八

二月近く静かな田舎に暮して見ると、欧羅巴へ来てから以来のことばかりでなく、国を出た当時のことまでが何となく岸本の胸に纏まって来た。彼はそう思った。仮りに人生の審判があって、自分もまた一被告として立たせらるるという場合に当り、いかなる心理を盾として自己の内部に起って来たことを言い尽すことが出来ようかと。何物を犠牲にしても生きなければ成らなかったような一生の危機に際会したものが、どうして明白な、条理の立った、矛盾の無い、道理に叶ったことが言えよう。