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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
『寝覚』附記
しかし、これなしにはあの『嵐』にまで辿り着いた自分の道筋を明かにすることも出来ない。
この作、もと二部より成るが、本来なら更に一部を書き足し全体を三部作ともして、結局この作の主人公が遠い旅から抱いて来た心に帰って行くまでを書いて見なければ、全局の見通しもつきかねるような作で、人生記録としてもまことに不充分なものではある。それに、これを書いた当時と二十年後の今日とでは、周囲の事情も異り、人も変り、そういう自分の心の持ち方も改まって来ている。そんなわけで、この文庫第七篇のためにはむしろ第一部を選び、作中の主人公が遠い旅に出るから帰国を思うまでのくだりにとどめ、題も『寝覚』と改めた。
今日になって見ると、これを書いた当時わたしは新生という言葉に拘泥し過ぎたことに気づく。新生が新生であるというのは、それの達成せられないところにある。そう無造作に出来るものが新生でもない。その意味から言っても、今回改題の『寝覚』こそ、むしろこの作にふさわしい。
この作の第一部は大正七年四月に着手し、東京大阪両朝日紙上に発表した。時に四十七歳。第二部を脱稿したのはその翌年九月のことであった。