轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

彼はなだらかな岡の地勢を成したソルボンヌ界隈の町をパンテオンへと取り、あの古い建築物の側にあるルウソオの銅像の周囲を歩いて、それからサン・ジャックの町の狭く長い石造の歩道を進んで行って見た。ヴァアル・ド・グラアスの陸軍病院の前から、ごちゃごちゃと雑貨の店の並んだ細い横町を通り抜けると、その町の角が以前の下宿のある建築物だ。主婦はもう世帯を畳んで他へ移って終ったから、高い窓々は皆閉きってあったが、三年の間机を置いて獄中で勉強した人のように新しい言葉を学んだその自分の部屋の窓がもう一度彼の眼にあった。まだ朝のうちのことで、日頃顔を見知った朝通いらしい人達、牛乳の罎を提げた娘、新聞を買いに出る町の下女なぞが高いプラタアヌの並木の間を往ったり来たりしていた。岸本は天文台前の広場について、例のシモンヌの家へも一寸別離の言葉を掛けに寄った。捕虜にでも成ったらしいという娘の父親は行方不明のままであった。二度とこんな旅に来ようとは思わない。それが岸本の腹の中にあっても、さすがにこの大きな都会ももう見られないかと思うと深い愛惜の心が湧いた。彼はサン・ミッシェルの並木街を旅館まで歩いた。