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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「なにしろ同じものが三つなければ不可んですから」と岸本は嫂等の方を見て言った。

「俺には?」と次郎が悲しそうな声を出した。

「へえ、次郎ちゃんにも」

岸本は巴里から求めて来た動物の絵本を次郎に分けた。次郎は兄等の貰った物と、自分のと叔父さんの土産の違うのを不平らしく見比べていたが、やがて機嫌を直して、鳥や獣のついたその絵本を母親のところへ持って行って見せ、祖母さんのところへ持って行って見せ、節子のところへも持って行って見せた。

「どれ、見しょ」

と義雄が郷里の方の言葉を出して言うと、次郎はそれを父親の方へも持って行った。

「何だかこの本は異人臭い」と一郎は叔父の土産を嗅いで見て、笑い出した。

「子供は何か食うものでも貰わないと、貰ったような気がしないぞ――」と義雄は岸本に言った。

「そうですね。大阪で買ったお菓子がありますから、あれも一緒に分けてくれますかナ」

岸本は起ったり坐ったりした。表の往来に接した窓からは午後の日が祖母さん達の居る部屋の障子に射していた。節子はその部屋の隅の方に小さくなって、泉太や繁と一緒に遠い国のお伽話の本なぞをひろげて見ていた。

二十