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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
眼前に戯れ遊ぶ次郎を見ていても、直ぐ彼の胸には平気で居られないような聯想が迫って来た。節子の産落したという男の児は丁度この短い着物に巾着なぞを着けた嫂の子供と同じ年齢であったから。
岸本は気を取直して、旅から持って来た別の鞄を解いて見た。
「姉さん、こういう人形が出て来ました。祖母さんにもお眼に掛けますかナ。これは君ちゃん(岸本の末の女の児)に遣ってくれッてそう言って、巴里の下宿の主婦がくれてよこしました」
「どれ――まあこのお人形さんは可愛らしい。青い頭巾なぞを冠って」
と嫂は言って、瞳の青い仏蘭西の人形を祖母さんや節子と一緒に近く集って眺めた。
「その人形の着物は、それでも下宿の主婦が自分で手縫にしたものだなんて言いましたっけ。国へ帰ったら、これを解いて見ると分る、仏蘭西の女の児の着るものは皆この人形が身につけていますなんて、そんなことも言ってくれてよこしましたっけ――」
こう岸本が言うと、節子は母親に寄添いながら、
「髪は茶色ですねえ」
「ほんとに」と祖母さんも人形を手に取って見た。
何となく節子は自分の手を気にしている容子であった。岸本はそれを看て取って、何気なく訊いた。