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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
四十一
愛子は彼女の学友に就いて、岸本の方で知りたいと思うようなことは一々女らしい観察を書いてよこした。その人の生立ちに就て。その人の気質に就て。長く東京に住んで見たものでなければ一寸思い当らないようなその人の江戸風で平和な家庭に就て。愛子は学友の容貌のことまで書いて、その点で特に取立てて言うほどの人では無いが、しかし細君としては定めし意気で温順しい人が出来るであろうし、母親としては叔母さんの子供を好く見てくれるであろう。第一子供をいじめるほどの強い人では無いと書いてよこした。愛子はまた、平常を熟知する学友と彼女との間が近過ぎるため、あまりに多くを言って見る気には成れないが、しかし叔父さんの心がすすんでいるならばこの縁談に賛成することを躊躇しないと書いてよこした。彼女としても、旧い馴染の学友が叔父さんの家庭に入ることを楽しみに思うとも書いてよこした。
ここまで話が実際に形を具えかけて来た。愛子の報告を読むにつけても、岸本は子まで成した節子と自分との関係が如何にこの二度目の結婚に影響して行くかを想わずにはいられなかった。彼はまた自分の再婚の場合を仮に節子が他へ嫁いたとして宛嵌めて見た。