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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
十三
「子供がいろいろお世話に成りました」それを岸本が言って、下座敷に置いてある箪笥の抽筐の底から園子の残したものを節子姉妹に分けてくれたこともあった。「節ちゃん、いらっしゃいッて」とその時、輝子が妹を呼んだ声はまだ岸本の耳についていた。子供の世話に成る人達に亡くなった母親の形見を分けることは、岸本に取って決して惜しく思われなかった。
復た岸本は箪笥の前に立って見た。平素は節子任せにしてある抽筐から彼女の自由にも成らないものを取出して見た。
「叔母さんのお形見も、皆に遣るうちに段々少くなっちゃった」
と岸本は半分独語のように言って、思い沈んだ節子を慰めるために、取出したものを彼女の前に置いた。
「こんな長襦袢が出て来た」
と復た岸本は言って見て、娘の悦びそうな女らしい模様のついたやつを節子に分けた。それを見てさえ彼女は楽まなかった。
十三
ある夕方、節子は岸本に近く来た。突然彼女は思い屈したような調子で言出した。
「私の様子は、叔父さんには最早よくお解りでしょう」
新しい正月がめぐって来ていて、節子は二十一という歳を迎えたばかりの時であった。丁度二人の子供は揃って向いの家へ遊びに行き、婆やもその迎えがてら話し込みに行っていた。