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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
彼は旅行記の一節にこう書いた。
「……野蛮人は必要によって動く。私が矢張それだ。もうどうにもこうにも仕方がなくなって、それから動いて来た。私はあの七年住慣れた小楼に、土の気息にまじって通って来るかすかな風の歎息のようにして、悲しい憤怒の言葉を残して来た。そうだ。光と熱と夢の無い眠の願い、と言った人もある。こういう言葉を聞いて笑う人もあるだろうか。もしこれが唯の想像の美しい言い廻しでなく、実際この面白そうなことで充たされている世の中に、光と、熱と、夢の無い眠より外に願わしいことも無いとしたら、どんなものだろう。丁度私はそれに似た名状しがたい心持で、二週間ばかり床の上に震えていたこともある。過ぐる年の冬の寒さも矢張りこの神経痛を引出した。私が静坐する習癖は――実は私はそれでもって自分の健康を保つと考えているのだが、それが反ってこうした疼痛を引起すように成ったのかも知れない。それに饒舌が煩くて、月に三四度ずつは必ず頼んだ按摩も廃めた。私は自分の身体が自然と回復するのを待つより外に無かった。はかばかしい治療の方法も無いと言うのだから。私は眠られるだけ眠ろうとした。